かすがい現象とは?

かすがい現象(カスガイゲンショウ)は、刑法学上の罪数理論における概念の一つです。具体的には、併合罪となるべき数罪について、それぞれの罪がある罪と観念的競合または牽連犯の関係にあることにより、その数罪全部が科刑上一罪として扱われる現象を指します。

例えば、昭和29年の判例では、住居に侵入して順次3人を殺害した犯罪について、各殺人罪と住居侵入罪がそれぞれ牽連犯の関係に立つことにより、3つの殺人罪が1つの住居侵入罪によって結びつけられ、全体が科刑上一罪とされました。

この概念は判例でも認められており、刑法上の学説や判決によって具体的な適用がされています。

刑法学者たちは、この「かすがい現象」による処断刑の不均衡や訴訟法上の問題点について議論していますが、具体的な解決方法はさまざまです。

「かすがい現象」による処断刑の不均衡に関しては、いくつかの問題点が指摘されています。具体的には、以下のような点があります:

  1. 科刑上の不均衡: 「かすがい現象」により、本来は複数の罪で処断されるべき事案が一罪として処理されることで、処断刑が軽減される可能性があります。これは、犯罪の重大性に対して、刑が相対的に軽くなるという不合理な結果を招くことがあります。
  2. 一事不再理効の適用範囲の拡大: 「かすがい現象」によって一罪とされた場合、その罪に関連する全ての事実に一事不再理効が及ぶことになります。これにより、本来は別個に処理されるべき事実までが処断の対象外となる可能性があり、予期せぬ広範な影響を及ぼすことが懸念されています。
  3. 起訴の運用に関する問題: 実務上、検察官は「かすがい」となり得る犯罪について起訴を控えることがあります。これは、不都合な「かすがい現象」を回避するための措置ですが、その運用が適切かどうかについては議論があります。
  4. 判例の整合性: 最高裁の判決において、「かすがい現象」を訴因として提示される場合、具体的な解決として適当かどうか、また、他の判例との整合性に疑問が生じることがあります。

これらの問題点は、刑法学上だけでなく、刑事訴訟法上でも重要な議論となっており、適切な処断刑を求める上で慎重な検討が必要です。

「かすがい現象」における一罪の一部起訴の限界に関する例を挙げますと、以下のようなケースが考えられます:

例えば、ある人物が住居に侵入し、室内にいた2人を殺害したという事案があります。この場合、住居侵入罪と2つの殺人罪が発生しますが、かすがい理論によって科刑上一罪として扱われる可能性があります。しかし、検察官が住居侵入罪を除いて2つの殺人罪のみを起訴した場合、これらは併合罪として処理され、量刑が重くなることが被告人にとって不利益になるため、問題となります。

このような場合、「一罪の一部起訴」の問題は、証拠が十分にあり、一罪の立証が可能であるにもかかわらず、敢えてそのうちの一部についてだけ起訴することができるかという点にあります。一罪の一部起訴を認めると、訴因制度の下では裁判所の審判対象が検察官の設定した訴因に限定されるため、実体的真実発見の要請に反する可能性があります。

また、公訴不可分の原則や実体的真実発見の要請に反する結果になることを理由に一罪の一部起訴を認めない消極説もありますが、判例・通説は積極説を採用しています。積極説によれば、検察官は事案の軽重、立証の難易等諸般の事情を考慮して、一罪の一部についてのみ公訴権を行使することも原則として許されると解されています 

ただし、検察官の訴因設定権・訴追裁量権の行使は、合理的裁量に基づくものでなければならず、一罪の一部起訴が不合理な裁量によるものであるときは、当該一部起訴は違法・無効になると解されています。一部起訴が不合理な裁量による場合には、裁判所は公訴棄却すべきとする見解が通説です。

このように、「かすがい現象」における一罪の一部起訴の限界は、法的な複雑さと実務上の運用の難しさを示しており、具体的な事案に応じた慎重な判断が求められます。


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